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2091年を舞台にした近未来SF。火星に住んでいる人々が、隕石らしきものが落下したことから謎の苦難に襲われる話です。移住当初は国籍に関係ない理想郷を作る夢もありましたが、やがてそれぞれの国の入植地に明確な分断が生まれてしまいます。さらに、地球からの支援がなければただちに命の危機に陥る状況にあるので、祖国が他国との断絶を望めばそれに逆らうことは困難です。こういった状況は過去にも現在にもありますが、作中ではさらに極端な状況として設定されています。それゆえに、人は信じあうことができるというシンプルな希望が輝いてきます。サラのママは人権派弁護士。常にマイノリティの側につき、自分の弟がゲイであることがわかったときも真っ先に味方になりました。ところが、おじいちゃんが自分と同じくらいの年齢の女性と再婚しようとしていることを知り、大反対します。サラはおじいちゃんを応援するため、あれこれ試行錯誤します。子どもの浅はかな策略が思いがけない方向に転がっていく様子が笑えます。ドタバタコメディとして楽しませながら、いろいろなことを考えさせてくれる作品です。首を抜く方法を最後まで見抜けなかったのが悔しかったです。弱き者が連帯して巨悪を倒す話はおもしろいという、基本を大事にしている作品。小嶋陽太郎なので、またもヤバい三人組が登場します。