『アリとダンテ、宇宙の秘密を発見する』(ベンジャミン・アリーレ・サエンス)

2012年にアメリカで刊行されたBLYA。80年代後半のテキサス州エルパソを舞台に、メキシコ系の少年アリとダンテの恋の物語が語られます。
アリの父親はベトナム帰還兵で以前とは人格が変わってしまい、兄は刑務所に入っています。家庭に闇を抱えた孤独な少年として、アリは登場します。一方のダンテは文化的に恵まれていて、アリに泳ぎ方や詩の読み方を教えてくれます。
アリとダンテ、すなわちアリストテレスとダンテという人類史上有数の知の巨人から主人公たちは名前をもらっています。考え深く思いやりを持ったふたりのイチャイチャを詩人でもある著者が時にアッパーに時に湿度高く描いているので、読みやすく好感度が高い作品になっています。
やがて作品は、キスと暴力という問題に踏みこんでいきます。そういう語りにくい厄介な問題も、この作品の性質ゆえ真摯に取り組まれています。