『学園ミリオネア 100万円ゲーム』(遠山彼方)

中高一貫の私立校圓城寺学園に入学したサクラでしたが、急に父親の経営する会社が倒産し*1、1学期に100万円の学費が払えず転校の危機に陥ります。学園のイケメン王子タケルが父親の会社の取引先の御曹司だったので取引を考え直してくれるよう懇願したところ、「金持ちになる才能のないビンボー人が! これがビジネスなんだよっ!!」という暴言を浴びせられます。そこに現れたのがボサ髪のパッとしない男子渋沢シキ。名前から金の匂いが漂ってくる彼は、タケルと謎のゲームをすることになり、サクラは1日パン3個でシキに雇われこき使われます。
家柄によってクラス分けされるという学園の設定が最悪です。そんななかでセレブの生徒だけが参加できる謎のゲームに庶民が巻きこまれるという設定は魅力的。学園のセレブたちは「J」*2と呼ばれる学園内通貨を使って投資ゲームをしていました。学園内の各部活が株式会社のようになっていて、それに投資できる仕組みです。投資というと子どもにはあまりなじみのない世界ですが、投資して学園内のおもしろ部活を応援するという方向性で共感を呼びやすくしています。
児童文学で金儲けの話といえば、やはり『うわさのズッコケ株式会社』です。あとがきでも著者がそれからの影響を明かしています。しれっと粉飾決算をやらかしたことからわかるように、ズッコケ株式会社の功績は児童文学であっても金儲けには倫理は無用という方向を打ち出したことにあります。この作品でもそれが踏襲されていますが、次巻以降はどうなるのでしょうか。

*1:父さんが経営している会社が……倒産しちゃいましたっ☆」というダジャレに☆までつけた軽いノリなので、あまり深刻に捉えなくてよさそう。

*2:学園内で使われる隠語が「J」(しかも読み方が男性名っぽい「ジョージ」)というのは某メフィスト賞作品を思い出させるけど、この話はあまり掘らない方がいいか。