「クレヨン王国 王さまのへんな足 (講談社 青い鳥文庫)」(福永令三)
少女小説なのに老苦と病苦を描いている特異な小説です。ゴールデン王は足の痛みに苦しみ、自分の足をにくんだ報いとしてカエルの足をつけられてしまいます。そして王様の足はおしっこぼっちゃま(小便小僧)に取られてしまいます。王様は自分の足を取り戻すために家出をして、おしっこぼっちゃまと彼の恋人の猫のプーニャとともに旅立つことになります。身体性の描き方がおもしろいです。ちょっとまとめてみます。ネタバレを含むので注意してください。
王様
カエル→カニ→かかし(竹)→キューピー
こんな具合に王様の足は変遷します。爬虫類から甲殻類、そして植物になって最後は無生物。だんだん人間離れしています。
王様はおしっこぼっちゃと取引をします。おしっこぼっちゃまはもともと天使なので、白い翼を手に入れたら王様に足を返すというのです。王様ははりきって鶴やサギを捕まえようと協力します。体を交換可能な物とする思想が表れています。王様は翼を捕られる鳥の立場は全くかえりみようとはしません。利己的な王様です。わたしがクレヨン王国の国民だったら、こんな王様の姿を見せられたら革命か亡命を考えるでしょう。ゴールデン国王は聡明で有能な王様だったような気もしますが、この巻では見る影もありません。
ただし最後は、おしっこぼっちゃまはキューピーの足を手に入れ、王様は自分の足を返してもらうことになります。キューピーの足は一季節しかもたない他の足と違って長持ちする足です。王様には自分の痛む足を捨てて若いキューピーの足を手に入れるという選択肢もあったはずです。それをしなかったのは王様にひとかけらの良心があったということなのでしょう。足の痛みの問題がいつの間にかうやむやになっているのは物足りませんが。
プーニャ
彼女の特徴はひげを切られていることです。お城に仕えるにあたって、失敗してもひげのせいにできるという親心から切られたそうです。これも身体改造の思想です。猫のひげを切るというのは纏足に匹敵するくらいの身体に対する虐待だと思われます。
おしっこぼっちゃまはわかりやすいことに、ひげのない彼女に惚れたのです。旅に出てひげが生え始めると彼女から心が離れてしまいます。