「旅のくつ屋がやってきた」(小倉明)

旅のくつ屋がやってきた (おはなしさいた)
旅のくつ屋がやってきた (おはなしさいた)」(小倉明)
 国防をめぐる物語ですか。時節がら厄介なテーマです。
 ホテルの息子パド少年は旅の靴屋と知り合います。パドは靴屋が街の人間の住所や名前を調べているところを目撃し、父親に報告しました。すると父親は急に落ち着かなくなり、パドに槍の塔にこのことを知らせに行くように指示します。
 町の負の歴史に全く戦争責任のない少年も関わらざるを得ません。最優先事項はなんとしても町の人々の安全を守ることです。でも誤解に基づいて先制攻撃をするのはできればさけたい。そのせめぎ合いの中で結論を出さなければなりません。
 どれだけ議論を尽くしても、結局は結果を見ないと何が最善だったかはわかりませんし、真実はそれぞれ人々が勝手に判断することしかできません。結論の出しようのない問題ですが、その中で最善の判断をしようとする人々の姿を描いているところにこの作品の意味があると思います。