「クレヨン王国からきたおよめさん」(福永令三)

クレヨン王国からきたおよめさん (講談社 青い鳥文庫)
クレヨン王国からきたおよめさん (講談社 青い鳥文庫)」(福永令三
 たまたま乗った電車が「なぐり電車」。誰もいないはずなのに無意味に殴られてしまう。そしてなぐり電車に乗ってたどり着いたのが「カフェテラスクレヨン王国」で、そこではクレヨン王国か追放された者が「およめさん」として人身売買されています。主人公の亜有子は女の子ですが、そんなことにはかまわずべんきょうのおよめさんを手に入れます。 べんきょうのおよめさんによって亜有子は競争ばかり気にするいやな子になります。そんな説教くさい要素はあります。でもその欠点を補って余りあるナンセンスなおもしろさをこの作品は持っています。だって「なぐり電車」ですよ。電車に乗ってるだけでなんも悪いことをしていないのにボカスカ殴られるんです。どうしてこんな発想が出来るのか。目玉を180度回転させて脳内のおよめさんを見るなんていうのも笑えます*1
 シリーズの中で突出した派手さを持っている作品ではありませんが、こういう作品にこそクレヨン王国の典型的なおもしろさが詰まっていると思います。 

*1:寺山修司に「眼球のうらがへる病」というのがありました。こっちは苦しみのあまり目玉をえぐり出して畑に埋めてしまうという陰惨な話です。たしか「田園に死す」にのっていたと思いますが。