「おそなえはチョコレート」(小森香折)

おそなえはチョコレート
おそなえはチョコレート」(小森香折
 ゴミ捨て場で拾った人語を解する蛇のぬいぐるみスマスマとの心温まる交流の物語……と思いきや図書館を舞台にした陰謀ものに発展します。スマスマの登場エピソードが一段落したら今度は理想と現実のギャップに悩む新人図書館員きしちゃんが登場します。その次はゆうという少年が出てきます。この少年の過程は父親がリストラされたために母親が占い師をはじめて生計を立てています。この三人が図書館で出会い、図書館を舞台にした事件に巻き込まれます。
 「こどもをまもる会」なんていう非常に押しつけがましい団体が出てきて、図書館に不気味な本を寄贈していきます。この本と図書館に飾られている絵が物語のキーになります。
 子供に関わる全ての大人はこの作品を読んで耳が痛い思いをすると思います。子供に接するときにどうすればいいか、こんな簡単なことを子供に説教されていてはいけませんよ。でも理屈は簡単だけど、実践するのは難しいんですよね。
 ちょっと説教臭さは感じますが、やはり小森香折はファンタジーがうまい。説教臭さがマイナスの方向に行っていません。むしろ強いメッセージ性に後押しされて物語がおもしろくなっているように思います。