追悼・長新太「キャベツくん」

キャベツくん (ぽっぽライブラリ―みるみる絵本)

キャベツくん (ぽっぽライブラリ―みるみる絵本)

 おなかをすかせたブタヤマさんは、道端で出会ったキャベツくんを食べようとします。するとキャベツくんは、「ぼくをたべるとキャベツになるよ!」といって、空に鼻がキャベツになっているブタヤマさんの姿を映して見せます。ブタヤマさんは「ヘビがきみをたべたら?」「タヌキだったら」と聞きます。キャベツくんは次々と動物たちの姿を空にうかべます。
 空に動物が出てくるたびに、「ブキャ!」とおどろくブタヤマさん。繰り返しのおもしろさで作品世界に引き込まれます。
 動物のどこがキャベツになっているか?そしてブタヤマさんの驚き方。少しずつ移り変わる背景。見所が分かりやすくておもしろい。絵本というメディアの特性を知り尽くしているからこそ出来る職人芸です。
 最終的にキャベツくんは、食べることしか考えないブタヤマさんに哀れみを感じてレストランに連れて行ってやります。弱肉強食、生存競争をこえたふしぎな関係性です。
 でも考えてみれば、体の一部がキャベツになるってこわくないか?しかもそれが空に浮かぶというのは、ナンセンスというより狂的なイメージだとも思えます。