「ぎぶそん」(伊藤たかみ)

ぎぶそん (teens’best selections)

ぎぶそん (teens’best selections)

 もうすぐ昭和が終わろうというあの時代、文化祭に向けてがんばる中学生バンドバカ四人組の物語です。
 「ファミコン」「メガドライブ」「サスケ」「駄菓子屋」それから「下血」に「じしゅきせい」。あのころを思わせる懐かしいアイテムがたくさん出てきます。これは現役の中学生に向けた作品というよりも、あの時代に十代を生きた年代のノスタルジーを誘うための作品といえましょう。
 バンドに新メンバーが加入したことで人間関係がぎくしゃくしたり、バンド内恋愛があったりと、うれしはずかしい思春期を追体験できます。ガクとリリイのどっからどうみても両思いのカップルが足踏みしている様子なんかはどつきたくなるくらいはずかしい。家に上がり込まれて料理まで作られたら脈があるに決まっているでしょう。
 バンドのメンバーの一人のかけるが、さやま団地といういわば貧民街に住んでいること。そしてそのかけるのおじいちゃんの存在(戦争に行かなかったのに嘘の武勇伝を語り飲んだくれている)を考えれば、深読みすることはできます。でも子供達にとっては昭和の終わりもさして重要な出来事ではありません。彼らはもっと目の前の事を重要だと感じています。そこが思春期の健全さでもあり、愚かさでもあると思います。