「肉食カーニバル」(レモニー・スニケット)

肉食カーニバル (世にも不幸なできごと 9)

肉食カーニバル (世にも不幸なできごと 9)

 オラフの車のトランクに隠れていたボードレール姉弟妹。彼らが連れて行かれたのは怪しげな占い師マダム・ルルが経営するカリガリ・カーニバル(移動遊園地)でした。オラフの手から逃れるためにボードレール姉弟妹はフリークに変装し、カリガリ・カーニバルのフリークハウスに職を求めます。そこへオラフがライオンを何頭もつれてきて、危険きわまりないカリガリ・カーニバルの新しいアトラクションを提案してきます。ボードレール姉弟妹は「バイオレンスとぴちゃぴちゃ食い」というシリーズでも最大級の直接的な危機を迎えます。
 今回描かれているのは娯楽を求める民衆の恐ろしさでしょうか。カリガリ・カーニバルのフリークハウスのフリークたちは、フリークといえるほど目立った特徴のない人たちです。両利きの人間が出てきてフリークでございなんていった日には、金かえせというのが正常な反応でしょう。それでも興行主や観客が彼らをフリークだと決めつけ、見せ物にして娯楽とすることが可能になっています。もはや差別の恐ろしさというより、差別のばかばかしさが露呈されています。
 相変わらず周りの大人は頼りになりません。フリークたちは恐ろしい運命を前にしてドミノで遊んでいるだけ。味方かと思えたマダム・ルルも、「人が望むものをあたえる」なんていうわけのわからないポリシーをかかげて、ああいう結末を迎えてしまいます。
 8巻から次回への引きがだいぶ強引になってきました。まさか○○○があんな事になってしまうとは。でも○○○だったら全然心配ないような気もします。訳者あとがきには「次巻にはあっと驚く人物がふたりも登場する」という情報も載っています。とにかくこんな終わりかたでは次が待ちきれません。次巻はぜひとも年内に出してほしいです。