「クレヨン王国幾山河を越えて」(福永令三)

クレヨン王国 幾山河を越えて (講談社青い鳥文庫)

クレヨン王国 幾山河を越えて (講談社青い鳥文庫)

みどころ①アラエッサ・田主さん運命の出会い。
 前巻でストンストンはあっという間に行き着くところまでいってしまったのに、アラエッサの方は見るにたえないくらいもどかしい。週刊誌のお礼を田主さんに贈るがどうか悩んで、結局は運命を天に任せて問題を先送りする。まるで初恋をした男子中学生のように初々しいです。アラエッサはニワトリとしてはもういい年のはずではないのか?少なくともストンストンよりは兄貴分だったはず。ということはこの奥手さが彼の性質なのでしょう。でも端から見ると非常に危なっかしく見えます。田主さんは社会人とはいえ外見はだいぶ幼く見えます。いい年で(一応)伯爵の位にあった男が見初める相手にしてはあまりに犯罪チックです。
みどころ②まゆみポエムふたたび
 ずいぶん久しぶりにまゆみの電波ポエムを拝むことができます。クレヨン王国では猫も杓子もみんなうたいまくりますが、その中でも真打ちと言っていい存在がまゆみです。彼女も心の闇を順調に成長させているようで、恐ろしい詩ばかりうたいます。特にまゆみ詩集最後のページは寺山修司も裸足で逃げ出すくらい怨念のこもった鬼気迫る出来になっています。そんなに現実世界を否定してクレヨン王国を求めていいのでしょうか。まゆみが見たクレヨン王国は現実と同程度に腐敗していたはずですが。



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