「ガラスの大エレベーター」(ロアルド・ダール)

ガラスの大エレベーター (ロアルド・ダールコレクション 5)

ガラスの大エレベーター (ロアルド・ダールコレクション 5)

 「チョコレート工場の秘密」に続いて、柳瀬尚紀の翻訳です。非常にテンポのいい訳です。はちゃめちゃな物語との相乗効果で読書に没入させてくれます。
 それはいいのですが、ちょいとあとがきでの田村隆一批判が辛辣すぎはしませんか。このあとがきだけをみると批判は理にかなったもののように思えます。翻訳家として許せなく思えるようなミスが田村隆一にあったのかもしれません。しかし、ほかにな書き方かったのでしょうか。田村隆一という名前を出さずに、「以前の翻訳」と呼称していることにも含むものを感じます。
 わたしは柳瀬節は好きですし、田村隆一訳に特別思い入れがあるわけでもありません。でも、愉快な話を読もうと思って本を手に取ったのに、こんな悪口めいたもの(柳瀬尚紀にすれば正当な批判なのでしょうが)を読まされたらあまりいい気分はしません。批判をするなら別の媒体ですればいいのでは。
 この反感を買いやすい文章が彼のいい持ち味でもあるんですけどね。