「レモン・ドロップス」(石井睦美)

レモン・ドロップス
レモン・ドロップス」 (石井睦美
 作者は後書きでしきりに「恥ずかしさ」を強調していますが、この作品で感じられる「恥ずかしさ」は主人公の一貫性のなさだと思います。主人公の未希は、冷たい人間になることを目指して生きています。友達が思わせぶりなことをいったときに深く追及してあげない。自分の両親には物語がない*1と批評する。こんなところで冷たさを出そうとしています。YA小説ではありがちの主人公像です。
 ところがところが、その未希が、自分以上に冷血人間のはずの姉にはじめてできた恋人に横恋慕したりするようになります。この変化がどうも脈絡なく見えるんです。成長とか、事件による心境の変化という枠組みでは捉えられそうにないのです。それがかえって思春期の女の子の心理としてリアルなのかもしれません。確かに恥ずかしい物語でした。思春期は恥ずかしい。 

*1:母親が同じ会社に勤める父親と結婚した理由は、彼が早く出社しておそくまで残業する、しかも出張が多いからだそうです。要するに理想の男性は家にいない男ということですね。