「タモちゃん」(那須正幹)

タモちゃん (童話パラダイス)

タモちゃん (童話パラダイス)

 この作品の怖さは、他者との出会いが描かれていることにあると思います。クラスの女の子が死のことを考えていたり、友達から思いがけないしっぺ返しを受けたり、担任の先生は浮気していたり。なんとも理解しがたい他人。ちょうどタモちゃんの年齢、小学4年生くらいに、周りの人間は「自分と同じ人間ではない」ということに気づいてしまうんですね。これは恐怖です。作品の語り口が淡々としているだけによけい恐怖が増します。