「むかしむかしの鬼物語」(小沢章友)

 「今昔物語」や「宇治拾遺物語」などから鬼の出てくる話を集めてリライトした短編集。小沢章友ってこんな仕事もしてるんですね。多芸な人だ。
 現代では鬼というと角が生えてて、虎の皮のふんどしというイメージができています。しかし以前はもっとわけのわからないあやかし全般を鬼と呼んでいたようです。それだけに不条理な話が多く、怪談として高度に洗練されています。板が飛んできて人を押しつぶして殺す話なんか、本当にどうかしていておもしろいです。
 千葉幹夫による解説も必読です。たった8ページの文章で、日本における鬼の位置づけを過不足なくわかりやすく説明しています。鬼の語源から、その正体、文芸や伝承や生活文化における鬼の扱われ方まで網羅的です。これを読むだけで鬼についてはいっぱしに知ったかぶりできるようになれるでしょう。