「ふしぎなおばあちゃん×12」(柏葉幸子)

ふしぎなおばあちゃん×12 (講談社青い鳥文庫)

ふしぎなおばあちゃん×12 (講談社青い鳥文庫)

 和風の味付けのされたショートショート集です。おばあちゃんという存在が現在と過去と異界をダイナミックにつなげ、日常の中にぽっかり空いた不思議な世界に誘います。
 年齢を重ねた人間の物語であると同時に、年齢を重ねた町の物語でもあります。三年以上住み続けた人間しか入れない三年小路がある「いじわるな町」。なぜか人魚姫の話が嫌いな人ばかりが住んでいる清水小路の秘密を描いた「清水小路がきらいな話」。人が住むことによって空間が持ってしまう業が描かれている、不思議で怖い話が印象に残ります。
 意外性のあるオチが楽しめるのも魅力。いや、柏葉幸子がこんなに洗練されたショートショートを書く人だとは知りませんでした。