「猫の鼻十三墓の秘密」(那須正幹)

 江戸時代末期に処刑された一揆のリーダー13人の怨念が残ると言い伝えられている猫の鼻岬。そこで死亡した大学生の死は事故か殺人か、それとも呪いなのか……。
 探偵団の面々は、前巻の事件解決のごほうびとして写楽病院の別荘に招待されます。別荘で過ごす夏休みの日々。新しい友達もできて、釣りをしたり、泳いだり、このシリーズだから花札遊びも出てきたり……。もちろんその土地に伝わる怪談におびえ、犯罪という非日常も経験します。「こんな夏休みを過ごしたい!」とうらやましくなるような夏の描き方に那須正幹の技を感じます。
 そしてラストに、楽しかった非日常が終わった後の夏休みのうだうだ感を描写していることも、落差があっておもしろいです。最後のページの部屋でごろごろしている正太のイラストのリアリティのあること。祭りの後の倦怠、寂しさを感じてしまいます。