「三日月の輝く夜は」(西川つかさ)

三日月の輝く夜は―ペット探偵団の事件通信簿 (講談社青い鳥文庫)

三日月の輝く夜は―ペット探偵団の事件通信簿 (講談社青い鳥文庫)

小学5年生の亜美ちゃんの家に、ある日、アメリカンショートヘアの猫が迷いこんだ。それからというもの、亜美と猫は心で通じあえる強い絆で結ばれる。そのうえ、わんぱく丸出しの勇介と、珍獣・奇獣好きの山田くんに、髪もひげもボーボーの獣医の朝倉先生とで、ペット探偵団を結成することになるが、その前に、小学校で起こっている、ニワトリ殺害事件の犯人を捜すほうが、先だ!!

 と、こんなあらすじはどうでものいいのです。動物と話ができるという設定から心温まるストーリーを期待していると裏切られます。この作品で注目すべきポイントは、実にハイセンスなギャグをかましてくれるということなのです。
 不潔でむさい朝倉先生は、ようやくできた恋人にとてもとんでもないブラックジョークをかまして嫌われてしまいます。他にも朝倉先生は、くだらないオヤジギャグ*1を披露してくれます。
 内気な性格の山田くんはいつの間にかジョークを言うときだけ能弁になる変なキャラになってしまい、小粋なアメリカンジョー*2を飛ばします。
 主人公の亜美ちゃんの両親はものすごいおしどり夫婦なのですが、美人のママはパパの容姿を笑えないくらい辛辣なジョークで表現しています。
 こんな感じのすばらしいギャグが絶妙なタイミングで繰り出されています。あんまりギャグのネタバレをしても興ざめなので二つしか紹介していませんが、興味を持たれた方はぜひ手にとってください。めくるめく脱力の世界を楽しめる思います。
 青い鳥文庫でこの「ペット探偵団の事件簿」シリーズは三巻まで出ています。ということは、西川つかさのギャグセンスは青い鳥文庫の読者に受け入れられたようです。青い鳥文庫の読者は懐が深い。

*1:ワインで酔っぱらって「ワインって……こワインれひゅね……。」

*2:茶店で注文する時に「アメリカン……濃いめで」