「ぼくらのサイテーの夏」(笹生陽子)

ぼくらのサイテーの夏 (講談社青い鳥文庫)

ぼくらのサイテーの夏 (講談社青い鳥文庫)

 待望の文庫落ち。「ぼくらのサイテーの夏」とデビュー作の「きのう、火星に行った。」が読めるお徳用の一冊です。同時期に講談社文庫版も出ています。講談社笹生陽子に対する期待の大きさがうかがえます。
 「きのう、火星に行った。」の感想はこちら

「ぼくらのサイテーの夏」

 主人公の桃井は「階段落ち」という危険な遊びでへまをして怪我をしてしまいます。その罰として、同級生の栗田と二人、夏休みのプール掃除を命じられます。
 あまり接点のなかった二人が罰当番をきっかけに接近し、桃井の引きこもりの兄や、障害を持つ栗田の妹を巻き込んで物語は展開します。
 ありそうでなさそうな絶妙なシチュエーションの設定。これが笹生陽子のうまさなのだと思います。そして共感しやすい口語体の語りで読者を引き込むテクニックの妙。人気が出るわけです。