ねらわれた街―テレパシー少女「蘭」事件ノート〈1〉 (講談社青い鳥文庫)
- 作者: あさのあつこ,塚越文雄
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1999/03/15
- メディア: 新書
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ところがそのなぞめいた美少女翠はすぐにぼろを出してしまいます。ふだんは標準語で話していますが、実は関西弁でまくし立てる生きのいいお姉ちゃんであることが判明します。そして、主人公の蘭とゆかいな漫才コンビを結成*1。おかげで気楽に読み飛ばせる娯楽作品として成功しています。テーマは超能力を持ってしまったことによる疎外と、結構ハードなんですが。
ところで、この「疎外」というのは、多くのあさのあつこ作品で繰り返し語られるテーマになっているようです。たとえば「バッテリー」であれば、天才であるがゆえの疎外。「No.6」なら体制に疑問を持ってしまったことによる疎外。「えりなの青い空」なら変人であるがゆえの疎外。本作なら常人にはない能力を持ってしまったことによる疎外。
自分が自分であることに対する蘭の強い矜持の持ち方が、本作では疎外からの解放への糸口になっています。このテーマでつっこんでいけばあさのあつこ論をを一丁でっち上げられるかな?
月刊少年シリウス
ちなみにこの「テレパシー少女蘭」は月刊少年シリウスでコミック版が連載されています。現在発売されている11月号ではテレパシー少女蘭が表紙です。「恋も事件も私たちが解決」という煽り文句は少年誌とは思えないんですが……。この読売新聞の記事によると、もともと少女読者を意識して作っているようです。
「基本はファンタジー漫画+ライトノベル。漫画も小説も両方読む、活字好きな男の子、女の子を意識しています」ということ。このコンセプトには賛同できるだけに成功してもらいたいんですが、ネット上の評判を見る限りは厳しそうです。なんとか来るべき「ふつうの学校」のコミック化に向けて延命してもらいたい。いや、シリウスがいくら続いてもそれは無理か。
*1:ウソ