「朝はだんだん見えてくる」(岩瀬成子)

朝はだんだん見えてくる (名作の森)

朝はだんだん見えてくる (名作の森)

 岩瀬成子の1977年のデビュー作の新装版です。イラストは故長新太。いまだに彼の本はとぎれることなく出ているというのに……。まだ彼が亡くなったということが信じられない思いです。
 閑話休題岩瀬成子のデビュー作です。今読むと、彼女がこんなド直球の青春ものを書いていたことにおどろいてしまいます。もはや青春文学の古典と言っていいでしょう。
 米軍基地のある町に住む奈々の、中3の夏休みから2学期の終わりまでの物語。一学期の通知票で成績が下がり、「協調性」にDをつけられるというところからはじまり、反戦喫茶に出入りしたりデモに参加したりして、親ににらまれ教師ににらまれ警察ににらまれ……。大人や周囲に違和感を感じつつ自分らしい生き方を模索する物語です。すばらしい。やっぱり思春期はこうでないと。
 恥ずかしけどものすごく輝いている、奈々のこんなセリフが印象に残りました。

「あたしはね、あたしは、ただ……やりたいことをだれにもじゃまされずにやりたいだけよ」

「そうね、あたしがいつかくたびれて、うすよごれた大人になったときには、後悔するわ。だけど、あたしは、今あたしがこんな気持でいるってことを、きっと忘れやしない。あたし、世の中なんて大キライさ」