「ももいろ荘の福子さん」(村上しいこ)

ももいろ荘の福子さん (おはなしフレンズ!)

ももいろ荘の福子さん (おはなしフレンズ!)

 村上しいこ、今年はもう三冊も単行本を出しています。デビューしたばかりの作家としてはなかなかのハイペースです。関西弁で彩られた独特のあたたかみのある世界が、読者に受け入れられたのでしょうか。
 主人公の福子が小学4年生でアパートの大家をしているという設定がぶっ飛んでいます。日常生活でも覆面を着用している女子プロレスラーの浜子さん、裏表の激しい福子の担任教師ぷっちゃん先生ら、アパートの住人も奇抜な人ばかりです。
 ところがテーマは割と難しくて、コミュニケーションの困難さだったりします。福子は近所の子供のとまこちゃんからなぜか嫌われてしまいます。このふたりのすれ違いっぷりが笑えます。で、そのすれ違いが起きた理由を検証すると、福子さんの思考が子供のものではなく大人の発想になってしまっていたために起こっていたことがわかります。福子さん、若いのに苦労しすぎたんだよ。この大人でもあり子供でもある福子のアンバランスさが、笑える要素にも泣ける要素にもなっています。