「よくいうよ、シャルル!」(ヴァンサン・キュヴァリエ)

よくいうよ、シャルル!

よくいうよ、シャルル!

 シャルルはジジくさくて人からものを頼まれると断れない少年で、クラスのみんなからバカにされています。語り手のベンジャマンは居眠りしているシャルルを見て「こいつが世の中からいなくなっても、だれも何も変わらないんだろうなぁ……」としみじみ思ったりしていました。ところがある日、シャルルは事故にあい入院してしまいました。ベンジャマンはシャルルに宿題を持っていく係りに任命されてしまいます。
 主題は今まで軽んじていた人間と交流を深めていくことなのでしょう。この過程はユーモラスに描かれています。しかしその裏でまさかベンジャマンの両親がそんなことになっていたとは……。
 なんというか、語り手のベンジャマンは世界に対して妙に距離を置いている突き放しているところがあります。先に引用したシャルルに対する批評からもわかります。夕食がグラタンだという母親の前でさしてうれしくもないのにはしゃいで見せたりする場面もあります。でも、現実がそれでは、いちいちまともにつきあっていたらやりきれません。多少距離を置いて自分を防衛しないと疲れ果ててしまいます。特に子供には逃げ場がありませんから問題はいっそう切実になります。淡々と描かれているけど、子供が生きている現実の厳しさ、そしてできる限りの手段でそれをやり過ごそうとしている子供の苦労が伝わってきます。