「クリスマスの幽霊」(ロバート・ウェストール)

クリスマスの幽霊 (Westall collection)

クリスマスの幽霊 (Westall collection)

 工場で働く父の元にお使いに行った僕は、創業者のオットーの幽霊を見てしまいます。オットーの幽霊が現れた日には死人が出るという言い伝えが工場にはありました。オットーは今晩死ぬのは父親ではないかとおそれを感じ、父親を守るために行動を起こします。
 クリスマスの幸福感、そして信頼で結ばれた家族の幸福感が作品世界に漂っています。しかしその中に不気味に死の気配が進入し、緩やかに幸福が破壊されていきます。クリスマスの幸福から死の恐怖へ、極端から極端へ実にスリリングに作品の雰囲気を変容させています。考えてみればクリスマスの季節は寒さが厳しく、死の気配は身近にころがっています。もしかするとクリスマスの喧噪は、悲愴な無理をして盛り上げているのかもしれません。