「わたしたちの帽子」(高楼方子)

わたしたちの帽子

わたしたちの帽子

ぱたぽんぱたぽん わたしのぼうし
ぱたぽんぱたぽん あなたのぼうし
お花がさいてる はっぱがゆれてる
わたしたちのぼうし ぱたぽんぱたぽん

 家を建て替えるためにビルに引っ越してきたサキ。最初はビルの古びた感じがいやだったのですが、育という少女と友達になり、ビルの魅力を知っていきます。
 手品師の絵の額縁に触れると、額が開いて秘密の入口が出現します。その奥には螺旋階段があって、登っていくと小さな花壇のある屋上にたどり着きます。
 さらに変な踊りをするモグラみたいなおじさんにあったり、演劇の練習を目撃したり、「猫の事務所」という興味深い表札のかかった部屋をのぞき見したり。わくわくする出来事がたくさん起こります。難しいことは考えずに、サキとともにビルに魅了されているだけで十分楽しめます。
 終盤は育の正体などのミステリアスな伏線が回収され、きれいな大団円になります。
 本当の主役はビルそのものなのかもしれません。長い時間の積み重ねの中で、空間自体が背負うもろもろが非常に美しく描かれています。
 ちょっと陰影を秘めていて美しい出来根育のイラストが作品世界にマッチしています。「ルチアさん」もそうですが、高楼出来根コンビの本は非常に美麗なので、プレゼント用にいいんじゃないかと思います。