「プラネタリウムのあとで」(梨屋アリエ)

プラネタリウムのあとで

プラネタリウムのあとで

 ファンタジーの手法で思春期の痛みを見事に描いて見せた「プラネタリウム」の続編です。

笑う石姫

 心のカスが小石になって落ちてしまう少女の物語。図らずも三角関係の勝者になってしまうというだけの話ですが、そのために背負ってしまうものの重苦しさが切なく胸に迫ってきます。ラストのセリフは心に突き刺さりました。

地球少女

 …………アルジュナ
 体が膨張してしまう(えろい意味ではない)家庭内暴力少年貴志の物語。なぜか彼は「地球を救う」だの電波系の発言をする少女に好かれてしまい、つきまとわれることになります。
 貴志は少女の言葉の「地球」を「あたし」に入れ替えれば意味を解読できることに気づきます。少女はかわいそうな「地球=あたし」が救われたいだけなのであると。これはセカイ系の物語に隠された欲望を直截に批評しています。 

痩せても美しくなるとは限らない

 乙女の脂肪を吸い取る吸脂鬼に魅入られた少女の物語。彼女はBL作家志望で日々執筆活動にいそしんでいます。妄想の中に登場するすてきな人がタッキーにアスラン・ザラ。若いもんにはついていけません。

好き。とは違う、好き

 思春期の少年の妙な潔癖性を描いた作品。久覇くんは彼女の智恵理さんを少々うざく感じています。理由は彼女がしつこくつきまとってくることと、趣味の違い。久覇はクラシックが好きな高尚な趣味を持った少年で、智恵理さんがプラームスも知らないことにショックを受けてしまいます。一方彼女が勧めてくれる音楽や本は通俗的すぎて久覇には物足りないものでした。で、久覇はおそれおおくも智恵理さんは今までプラームスを知る機会がなかっただけなんだから、自分が啓蒙してあげようなんて考えてしまいます。それで二人の関係はいよいよこじれます。仲を修復しようと智恵理さんは強硬手段に出ますが、久覇はそれを拒絶してしまいます。
 久覇の傲慢も智恵理さんのバカさもどっちもわかるだけに痛々しく感じてしまいます。ラストは作者の悪意がにじみ出ていて戦慄ものでした。