「ごめん」(ひこ・田中)

ごめん

ごめん

 主人公の聖市がはじめて夢精を経験するところから物語がはじまります。思春期文学というより直接的に、第二次性徴文学と呼ぶほうがいいでしょう。全くてらいなく率直に性へのとまどいを描いている希有な作品です。
 もうひとつこの作品のおもしろい特徴は、全ての事象をドラクエに例えていることです。作品発表当時の最新のドラクエはⅤ。プレステ2にも移植されましたから、今の小学生ならかろうじて意味がわかるでしょう。でも、ドラクエがいかに息の長いシリーズとはいえ、いずれはこの素材の鮮度は落ちてしまいます。あと10年ほど寝かしたらこの作品、むしろ風俗資料としての価値が出てくるかもしれません。