「インナーネットの香保里」(梶尾真治)

ぼくより遙かに若い子どもたちには、「うらやましいぜ!」の言葉を贈ります。
あなたたちは、これからどんどんカジシン作品を読むことができます。

 はやみねかおるによる解説より引用。この本で初めてカジシンに触れた子どもに贈る言葉としては、これ以上のものは考えられません。
 ストーリーは至って単純です。中2の少女香保里が、怪しげ男たちに追われている超能力を持った青年暎兄ちゃんに一目惚れしてしまい、二人ではるばる九州白鳥山まで逃避行するというものです。暎兄ちゃんは3日以内に手術をしないと死んでしまうという制限時間がもうけられています。しかも手術が成功したとしても記憶を失ってしまうというのです。着々と泣かせる伏線を張っています。ここはさすがカジシン。さらにラスボスとして四足歩行ロボットが登場します。泣かせるだけでなくおバカ展開まで見せてくれるとは。本当にいい具合にカジシンのエッセンスを詰め込んでいます。で、最後は身構えてはいたんですがまんまと泣かされてしまいました。カジシンの叙情性にはかないません。