「おかしの男」(杉山径一)

おかしの男 (創作子どもSF全集 10)

おかしの男 (創作子どもSF全集 10)

 国土社の創作子どもSF全集の一冊。お菓子会社が秘密裏に開発したお菓子でできた人間光岡蜜夫が研究所から脱走し、少年たちが彼をかくまうというお話。
 アンドロイドもののSFはいくらでもありますが、その素材がお菓子だという発想がすごい。ほかにも巨大なチョコレートのコインなんてものも登場し、子供の欲望をダイレクトに刺激しています。
 お菓子人間の光岡蜜夫ですが、彼がのほほんとしたキャラクターで、逃走中のみであるにもかかわらずこんな将来を夢見ています。

ぼくのこれからの人生は、じぶんできめたいな。ぼく、だれにも命令されるんじゃなくて、自由に、旅をするおかしになりたいんですよ。自由に旅をしていて、おかしのすきな子と友だちになって、うででも、足でも、おへそでも、気にいったところを、かじらせてあげる。……そういうおかしに、ぼくはなりたい

 おまえは宮澤賢治か!?もしくはアンパンマンか!?ついついつっこみを入れたくなってしまいます。
 まあこんな感じですから話はあまり深刻にはなりません。ドタバタ調でお気楽に進みます。それだけにブラックなラストが引き立っています。