- 作者: ジェイムズ・オールドリッジ,中村妙子
- 出版社/メーカー: 評論社
- 発売日: 1976/09/30
- メディア: 単行本
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この物語の語り手はキットという少年で、スコティーの弁護を引き受けることになる弁護士の息子です。語り手を当事者にせず距離を置くことで、この物語が法律と正義をめぐる物語であることが強調されます。この弁護士がかっこいいのです。貧乏人からは金を取らないタイプの正義派。警察が最初から偏見を持っていて、金持ちのエア氏にのみ肩入れした捜査をしていること、目撃者の証言も先入観に基づいており信頼性に欠けることを淡々と証明していきます。でも、金持ち側を断罪するだけに終わらず、双方が偏見を少しずつ捨て歩み寄りを見せる方向に持って行きます。
「貧乏な少年」対「金持ちの大人」というわかりやすい善悪の構図を作り、語り手を部外者にすることによって、この物語は見せ物的になっています。町がスコティー派とエア派にわかれ、衆人環視の法廷で物語が進められる。町の人間はどっちが勝つか賭け事まではじめる始末。事件を見せ物化する手法によって物語は大きな盛り上がりを見せます。硬派なテーマを見事にエンターテインメントとして処理して見せた、めったにない名作といっていいと思います。