「魔女の宅急便その② キキと新しい魔法 」(角野栄子)

魔女の宅急便〈その2〉キキと新しい魔法 (福音館文庫 物語)

魔女の宅急便〈その2〉キキと新しい魔法 (福音館文庫 物語)

 「冷凍台風ミリミリ」……。魔女の宅急便角野栄子の卓越した言語センスが楽しめる作品です。コリコの町、コキリさん、とんぼさんなどなど。なかでもこの「冷凍台風ミリミリ」にはやられました。角野栄子ならこの言葉だけで長編一作くらいものせそうに思います。それを1エピソードで使い捨てるのだからすごい。
 お話は一巻に比べてだいぶ暗くなっています。自分の仕事がいいものを運ぶだけのものではないと気づいてしまったキキ。一巻はビジネスものとしてみれば気持ちのいいサクセスストーリーだったんですが、二巻では仕事上の挫折を味わうことになります。
 キキの運ぶものも、それに込められている寓意が強くなっていて、一巻より観念的になってきました。当然キキは前巻から一才年をとっています。この時期で年齢が一才違えばだいぶ変わってしまいますから、作品のトーンが変わるのも自然なことです。ひとりの少女の変化を描く作品としてこのシリーズは本当によくできています。