「怪盗クイーンと魔窟王の対決」(はやみねかおる)

怪盗クイーンと魔窟王の対決 (講談社青い鳥文庫)

怪盗クイーンと魔窟王の対決 (講談社青い鳥文庫)

 はやみねかおるといえば、映画です。クイーンシリーズも三作目(四作目?)にしてとうとう恒例の映画エピソードが登場しました。今回のクイーンのねらいは半月石という宝石。その所持者魔窟王の支配する香港の四龍島に潜入するため、ジョーカーは香港の映画スター李龍狼、クイーンはそのマネージャーに変装し、「C級映画の帝王」との異名を持つ洪良偉監督の作品に参加することになりました。
 はやみねワールドでは、撮影に燃える映画スタッフというのは最強なのですね。まあ彼らが気持ちよく動き回ってくれること。
 忘れてならないのは、はやみねワールドを代表する映画人のあの人がこっそり登場していたことです。彼は洪監督に「どうして大怪獣がでてこないんだ?大怪獣がでてこない映画は、映画じゃない!」と理不尽なクレームをつけます。ところが洪監督はその提言に感銘を受け、映画に怪獣を登場させることにしてしまいました。彼は本名を名乗らず、「『ヤング・マスター』とよんでくれ」と言い残して去っていきます。香港くんだりまで来て何やってるんだか……。映画は国境を越えた交流を実現させるすばらしい文化だというお話です。