「なんだかへんて子」(山中恒)

なんだかへんて子 (山中恒よみもの文庫)

なんだかへんて子 (山中恒よみもの文庫)

 山中作品には「母親と息子」をテーマにした作品が多く見られます。ざっと思いつくだけでも「あたまの先とあしの先」「ママはおばけだって」「くたばれかあちゃん」それに本作「なんだかへんて子」があります。その全てが大傑作だというのが恐ろしい。
 「なんだかへんて子」は小学4年生のヒロキと、小学4年生時代の母親であるところの「へんて子」とのあるはずのない邂逅の物語です。なのにへんて子はおかしな騒動を起こすだけ。作品の中からは、あえてこのような出会いを設定した意味を大仰に語られることはありません。しかし、意味を説かないことによって作品世界が非常に情念的になっており、ユーモアとペーソスの漂う雰囲気を醸し出しています。これがこの作品味わいを作っているのだと思います。