- 作者: 岡信子,木暮正夫
- 出版社/メーカー: 岩崎書店
- 発売日: 2005/10
- メディア: 単行本
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「日高山脈に」上條さなえ
華の母親は、高校中退の元ヤン、現在はチョコレート工場でパートをしています。そんな母親から好きな人ができたと聞かされた華は猛反発します。なぜなら、今まで母親が連れて来た男はみんなDV男だったから。
初恋アンソロジーの一発目でDVネタとは、大冒険ですね。
ところが、チョコレート工場の野球チームの応援に行った華は、ピッチャーのお兄さんに恋をしてしまいます。それで母親の恋にも理解を示すようになってしまいます。本当にそれでいいのか?DVなんて深刻な問題をこんなに簡単にスルーしてしまっては、不幸になる女の子が増えるだけだと思いますが。
「ブレーキもかけずに」大塚菜生
モトクロスのコース場を舞台にした恋物語。
「ラッキーはふたりの犬」風野潮
美 苗の幼なじみの千早はサッカークラブのエースストライカーで学校中の人気者。小一の時にふたりの犬を拾った思い出もありますが、現在は疎遠になっていました。ちょっと親しげな素振りを見せるとクラスの派手グループの女子から非難されます。
小六ともなれば派手な子と地味な子の格差は開いて地味な子はいわれのない劣等感を持つものです。でもそういうのって恋には関係ないもんねというお話。
「いちばん好きなひと」小笠原朋子
漫画。小学生二人組がドーナツ屋のお兄さんをストーキングする話。ひとりは真剣にお兄さんに恋しているのですが、もうひとりの子は新しい遊びを見つけたような感じでつきあっているだけ。「いちばん好きなひと」はお友達の方だったというオチ。こういう恋愛以前の話もほのぼのしていてよいです。つきまとわれるお兄さんはいい災難ですが。
「十五センチの記憶」池田美代子
池田美代子っていま売れまくっている「妖界ナビ・ルナ」シリーズの作者ですね。気にはなっていたのですが、著作を読むのは初めてになります。
麻衣は友達のミウや弟の瑞樹とケンカ中で落ち込んでいました。そんな麻衣に虫オタクの男の子リクが、ダンゴムシ迷路を見せてくれます。白い箱で作った迷路にダンゴムシを入れて歩かせるというもの。リクはダンゴムシが分岐にさしかかると、どちらに進むのかを見事に予言してみせます。
ケンカの原因が自分の考えの足りなさのせいだと気づかせるために、ダンゴムシ迷路というアイテムがいい役割を果たしています。タイトルの十五センチの意味がなんなのかはぜひ読んで確かめてもらいたいです。
「恋のおまもり」赤羽じゅんこ
モチーフとしては「ラッキーはふたりの犬」とほとんど同じ。人気のある男子と地味な女子のあいだを犬が取り持つというもの。同じような話が二つも並ぶってことはやはり女の子にとっては深刻なテーマなんでしょうね。
「マリングラス」横山充男
洋子がはじめて勇一さんにであったのは、ふたりがまだ小学五年生のときです。
このですます調の語りがなんともイヤな予感を持たせてくれます。海への遠足。転校して来たばかりでまだ友達のいなかった洋子は、一人で砂をいじっていました。そして、砂つぶの中に時々きれいな色の砂つぶが混じっていることに気づきます。「それってさ、マリングラスっていうんだよ」と声をかけてくれたのが勇一でした。でもそれ以来話す機会も無く、勇一は転校してしまいました。
再会したのは洋子が25歳の時。洋子は幼稚園の先生になっていました。幼稚園の行事で消防署の見学に行った洋子は、消防士になった勇一と再会します。勇一に連絡をとりたくて、119番に電話して取り次ぎを頼むなんていうバカ武勇伝を残したりします。
短い中に人生をダイジェスト版のように詰め込んでいます。出会い、別れ、再会、結婚、死別、出産(出産の前に死別がくるところがミソ)。重い。重い過ぎるわ。ですます調で淡々と語られているので余計に重く感じます。初恋がテーマのアンソロジーなんでしょ。ここまで人生の重さを見せる必要があるのか?いい!これでよいのです。