- 作者: 江端恭子,越水利江子,岡信子,木暮正夫
- 出版社/メーカー: 岩崎書店
- 発売日: 2005/12
- メディア: 単行本
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「気になる、あいつ」越水利江子
ヒロインの千代子は友達の結からバレンタインにちょっと気になる男子萩原くんにチョコを渡すようにそそのかされます。でも千代子には、幼稚園時代に初めてチョコをあげた男の子に、チョコを捨てられてしまったというトラウマがあり、なかなかその気になりません。ところが荻原くんと千代子には因縁があることがわかり……。
完璧。まったく非の打ち所のない少女漫画世界。こういうベタベタな話は大好きです。
「氷の恋人」金治直美
この話を一言で説明するなら、「美少年箱詰め監禁事件」?いえ、まったく誇張はありません。
小学生の女の子が大ババから昔話を聞くという設定になっています。大ババの父親はインキチ霊媒師を生業にしており、少女時代の大ババもその仕事を手伝っていました。ところがあるとき、本物の心霊事件に遭遇してしまいます。ある金持ちの病気で死んだ息子の霊が農家の裏山に出るという依頼でした。父親はいつものようにインチキをしますが、大ババは雪の上に少年の魂が張り付いているのを見つけます。美しい少年の姿をした魂は氷付けになっていてペラいので簡単にはがせました。大ババはそれをたたんで木箱に収め、持って帰ります。女の子は大ババの話をホラだと決めつけますが、よく考えるとそれらしい箱があるような……。
美少年をたたんで箱詰めというとんでもなく猟奇的な話です。
「涼くん、お元気ですか?」山田理加子
「わたし」は弟が入院している病院で涼くんという少年と出会います。涼くんは病院暮らしが長いのでちょっとメルヘンなことをいう浮世離れした少年でした。転校してきたばかりで友達のいない「わたし」は涼くんと仲良くなりますが、弟が退院してから忙しくなったためしばらく会えなくなります。久しぶりに病院に行くと、病室に涼くんはいませんでした。看護婦さんに聞くと、「大人が子どもに、かくしごとをするときの話し方」で涼くんは転院したと教えられます。
悲恋ものの最終兵器投入ですね。
「にたものクール」江端恭子
漫画。ツンデレ転校生を落とす話です。
「恋なんて知らない」服部千春
ヒロインの愛はまだ恋愛には関心のないお年頃で、授業でやっている百人一首に燃えていました。ところが勉強を教えてもらっているいとこのお兄さんから、自分の好きな歌は恋の歌ばかりだと教えられて、ちょっと恥ずかしくなってしまいます。そのうちお兄さんに恋人がいることを知り、お兄さんを意識し始めます。
愛は意味もよくわからず、自分の名前の「あい」という言葉がついている歌が好きだと公言しています。小学生にありがちの間違いだ。わたしも覚えがあります。小学生の女の子が「あいみての のちのこころに くらぶれば むかしはものを おもわざりけり」なんて露骨な歌を気に入っているのが危うげでいいです。
「恋のジャグリング」牧野節子
鈴音は進学塾に通い中学受験の準備をしながらも、自分の将来に明確な目標を持てずにいました。そんな時ジャグラーを目指す年上の少年アイアンと知り合い、ジャグラーのアシスタントになるのもいいかななんて憧れを持ちます。そこへ現れたのが幼なじみの鞠雄。鈴音を連れ戻そうとする鞠雄に彼女はこう言います。「目標がきまって、それにむかっていしょうけんめいやってい人って、かっこいいじゃない。鞠雄なんてまだ、なにになりたいかなんてこともきめてないでしょ」これに対する鞠雄の答えがふるっています。
んなことないよ。ぼくは政治家。政治家になって、世界をもっとよくするんだ。そしたら鈴音を秘書にしてやるよ。おまえこそ、なにになりたいかなんてきめてないくせに
なんとできたお子さまなのでしょう。しかもどさくさに紛れてしっかり告白してるし。しかし鈴音の心は動きません。やがて、アイアンに恋人がいることを知って鈴音は落ち込みます。今度は鞠雄がテニスボールをお手玉にして見せながら鈴音を慰めます。
姉ちゃんのテニスボールをもらって練習しているのさ。あいつより、うまくなったら、鈴音、ぼくのこと、かっこいいと思ってくれるだろ。そーだろ。鈴音がジャグラーのアシスタントになりたいのなら、ぼく、政治家やめて、ジャグラーになったっていいんだ。
なんとけなげなお子さまなのでしょう。ところが鈴音はここまで露骨な告白をあっさりスルーして、「わたしもいつか、アイアンや鞠雄のように、なりたい自分を見つけよう」と問題をすり替えてしまいます。鞠雄あわれすぎ。ってこれ、鞠雄視点で読む話じゃないんですけどね。