「つるつるスロープ 世にも不幸なできごと10」(レモニー・スニケット)

つるつるスロープ (世にも不幸なできごと 10)

つるつるスロープ (世にも不幸なできごと 10)

 シリーズ10作目。9巻の最後はサニーがオラフたちにとらわれ、ヴァイオレットとクラウスの乗ったトレーラーハウスは山道を猛スピードで転がり落ちるという危機的状況でひっぱっていました。最初の見せ場はヴァイオレットとクラウスがどうやってこの危機から脱するか。一刻を争う危機の中でヴァイオレットの発明は間に合うのか。冒頭からスリリングで読ませます。
 一方囚われの身のサニーは、作者の説明によるとこんな目にあっていました。

サニー・ボードレールがどのように時間をすごしていたか知りたいならば、だいたい似たような状況を描いた別の物語があるので、そちらをお読みになってはいかがだろう。シンデレラという人物にまつわる物語である。(中略)シンデレラをサニー・ボードレールにおきかえ、よい妖精や、すてきなドレス、舞踏会、ハンサムな王子、結婚、お城ですえながくしあわせに暮らす、をはぶけば、サニーの逆境がいかなるものか、明瞭におわかりになるだろう。

 このような状況の中でサニーは赤ん坊から小さな女の子に成長し、人類の言葉を話せるようになります。サニーはだいぶ前から人間をやめていたようなので、成長という言葉は不適当な気もしますが、めでたいことです。成長したサニーは姉や兄と同じように知略に長けており、悪党たちに囲まれながら立派にスパイ活動を果たします。身体能力の高いサニーにさらに知性が加わったとなれば、ボードレールの戦力は大幅にアップしたといえましょう。
 クァグマイヤーの三人目の登場、「かしくんくん」の再登場、またも怒濤のごとくわいて出るV・F・D。来るべき最終巻に向けてますますわけのわからない伏線が増大しています。どう決着をつけるのでしょうか。本国では今年の10月に最終巻が出るようです。日本語版も来年中には出してもらいたいです。