「オバケだって、カゼをひく! 内科・オバケ科ホオズキ医院」(富安陽子)

 迷い込み型のファンタジー。ポストの裏にある路地からぼくは変な病院鬼灯医院に迷い込みます。鬼灯医院は自称「この世にたったひとりの、偉大なオバケ科専門医」鬼灯京十郎が経営しています。ぼくはなし崩しに往診中の留守番を任されひどい目にあい、鬼インフルエンザの予防のために鬼に予防注射をする作業まで手伝わされさらにひどい目にあいます。
 富安陽子なのでさすがに安定しています。鬼インフルエンザという着想は面白かった。鬼インフルエンザはいったん鬼に感染するとあらゆるオバケに感染し大流行してしまうため、まず鬼がかからないように鬼に予防注射をしなければなりません。ところが鬼が注射嫌いでいうことを聞いてくれないため、命がけの作業になってしまいます。もちろん鳥インフルエンザのパロディで、笑い事にするには深刻すぎるネタなんですが、面白いからいいです。
 語られるエピソードが少ないのが唯一の不満ですが、それは続編待ちですね。謎の人物鬼灯京十郎の正体も追々明かされていくでしょうし。
 小松良佳のイラストは最近お気に入りになっています。彼女のとぼけた画風は、和ものの妖怪にもよくあっています。こちらも楽しみなのでぜひ続編を出してもらいたいです。