「キスの運び屋」(ロベルト・ピウミーニ )

キスの運び屋

キスの運び屋

 イタリア発の小粋なショートショート集です。表題作はいかにして男はコキュになるのかというお話。
 「聖トニオのお助け」は、綱渡りをしているサーカス芸人のフィローフィロの災難を描いたお話です。観客の前でまさに綱渡りをしているときに、バランスをとるためにもっている棒の片方にスズメがとまってしまい、フィローフィロはバランスを崩しそうになります。彼は神に祈りますが、ちょうどそのとき天国の救急センターの当番だったのが人はいいけどおつむの弱い聖トニオだっのが大誤算。聖トニオはバランスをとるためにもう一方のはしにスズメをもう1羽とめようとしますが、スズメは2羽仲良く一方のはしにとまってしまい、フィローフィロはますます危なくなります。聖トニオはフィローフィロを助けようとさらに手をさしのべますが、すべてが裏目に出ます。災難がどんどんエスカレートしていく、コメディの王道をいった作品です。
 「病気のストライキ」は、医者や薬の脅威に立ち向かうために世界中の病気たちが会議をするというナンセンスな話です。なかなか妙案が出ない中で、切れ者髄膜炎がある提案をします。それはみんなでストライキをするというもの。百年間あらゆる病気が活動を停止し人間を油断させ、医療に関する知識や技術を忘れさせようと言う遠大な計画でした。この提案は満場一致で可決され、実行に移されますが、完璧に思われた計画に思わぬ落とし穴が……。医者の商魂のたくましさには勝てません。
 他5編。奇妙な味のレベルの高いショートショート集でした。