「ウィルキンズの歯と呪いの魔法」(ダイアナ・ウィン・ジョーンズ)

ウィルキンズの歯と呪いの魔法 (ハリネズミの本箱)

ウィルキンズの歯と呪いの魔法 (ハリネズミの本箱)

 やっぱりジョーンズ作品には佐竹美保でないとね。表紙のおばばが実にいい味を出しています。
 お金に困った姉弟が「仕返し有限会社」をはじめます。いいアイディアだと思ったのに舞い込むのは厄介な依頼ばかり。依頼者の利害が複雑に絡み合い、収拾のめどがつきません。厄介ごとの中心には魔女ではないかと目されているおばばビディがおり、次第に物語はビディとの対決にむかって収斂していきます。
 ビディの邪悪っぷりがよいです。呪いをかけた犯人がビディではないかと探りを入れに来た子供達に、彼女はこともなげに「わたしが呪いをかけたんですよ。あの家族には恨みがありますからね。」と答えます。ぞわぞわくるではありませんか。ビディのおかげでどんどん状況が悪化していくなかで、ああでもないこうでもないと問題解決のために試行錯誤する子供達の様子が妙に楽しげなのも面白い。
 九子さんの指摘にもあるように、オチは定番すぎてちょっと弱いんですが、そこに至るまでの掛け合いはお約束ながらもユーモアと緊張感を感じさせ、ジョーンズのうまさが出ていると思います。
 序盤に怒濤のごとく出てくる登場人物の見分けさえつけば、後はそれほど混乱することなく読み進めていけました。*1ジョーンズ作品にしては読みやすかったです。

*1:にしても主人公兄弟の名前がジェスとフランクで、依頼人兄弟がジェニーとフランキーってのはわかりにくすぎ。別に似た名前なのが伏線ってわけでもなかったし。