「魔界屋リリー 謎の吸血美少女」(高山栄子)

バラの吸血美少女―魔界屋リリー (フォア文庫)

バラの吸血美少女―魔界屋リリー (フォア文庫)

 た、高山栄子……。高山栄子がフォア文庫ですか。イラストは老舗のゲームメーカー工画堂スタジオ出身の小笠原智史です。表紙画像はこちら
 学校では落ちこぼれだけど元気いっぱいの少女野山ゆり(リリー)が、血が吸えないために落第の危機に陥っている魔界の吸血少女マリーの試験の手助けをする話。マリーは前向きなリリーにの態度に心酔して、「リリー先生」と崇めたてます。元気なリリーと、ダウナー系おとぼけキャラのマリーは非常にいいコンビです。しかし、マリーが立派な吸血少女になるためには大好きなリリー先生の血を吸わなければならないと、倒錯した困った事態になってしまいます。
 ハイテンションでテンポよく物語はすすみ、楽しく読めるライトノベルになっています。悪役が縦ロールなんてところがお約束でよいです。一方で、落ちこぼれ同士の友情物語としてもしごくまっとうなお話です。ただ主人公の名前が「百合」だっていうのはできすぎか。冗談はともかく、大人にあなどられている子供の気持ちに寄り添えるところは、さすが高山栄子だと思います。
 いい本でした。いいかげん最近のフォア文庫に対する偏見は捨てようと思います。