「謎のジオラマ王国 ネオ少年探偵」(芦辺拓)

謎のジオラマ王国―ネオ少年探偵 (エンタティーン倶楽部)

謎のジオラマ王国―ネオ少年探偵 (エンタティーン倶楽部)

 少年少女探偵団の住む町を精巧なジオラマに再現した男滑刈乙二。彼はジオラマと町の住人をもしたフィギュアによって町を支配しているのだと言います。彼がジオラマに火をつけると、現実の町でも火事が起きてしまいました。彼の予言通りに町では不可解な事件が起こり、少年少女探偵団もひとり、またひとりと姿を消していきます。
 このシリーズは煽りが絶妙にうまいです。世界が得体の知れないものに浸食される不安は、江戸川乱歩の少年探偵団シリーズでもおなじみのモチーフです。予言通りに起こる事件、囚われの少女探偵が外部と連絡を取る工夫、話の中盤で事故死し、突如退場する名探偵、ひとつひとつのネタを取り上げればみんな既視感のあるものなのですが、全体を見るとそれらが見事に調和し、なつかしい乱歩的世界を現代に再現しています。不満点は犯人の犯行動機があまりにもしょぼすぎることくらいか。