「人形は笑わない」(はやみねかおる)

人形は笑わない 名探偵夢水清志郎事件ノート (講談社青い鳥文庫)

人形は笑わない 名探偵夢水清志郎事件ノート (講談社青い鳥文庫)

 思えばこのシリーズの第一巻、「そして誰もいなくなる」は夏休みの物語でした。夏休みに変な大人と過ごして非日常を満喫する、そして夏休みは終わっても名探偵という非日常が住み着いてしまいました。しかし非日常は延長されましたが、永遠に夏休みが延長されたわけではありません。この作品、主人公を進級させなければ永遠に物語を続けることができるのに、それをせずに時間を進行させてしまいました。これがはやみねかおるのすごいところです。教師という職業柄、成長しない子供は描けなかったのでしょうか。
 ともあれ亜衣やレーチいつの間にか中学三年生まで育ってしまいました。文芸部でも後輩を管理する側になり、亜衣とレーチのあわい恋も変わりつつあります。感慨深いものです。文芸部がらみでは発表されていないサイドストーリーがたくさんありそうですね。部員達も使い捨てるには惜しいくらい個性的ですし。ただし、亜衣とレーチについては語られていますが、真衣と美衣が背景と化してしまい、いらないキャラになっているのは残念です。
 今回は文芸部ご一行様が山中の寒村で映画を撮る話です。はやみねの情熱はなぜかミステリより映画の方が燃え上がるようですから、おもしろくならないわけがありません。レーチの鬼監督ぶりは必見です。