「極楽探偵シャカモトくん」(横田順彌・宮本えつよし)

極楽探偵シャカモトくん

極楽探偵シャカモトくん

いきなり、ぼくの部屋に、あの中国の小説の『西遊記』にでてくる孫悟空が、キント雲に乗ってとびこんできたんだから、おどろいた。
これで、おどろかない人がいたとしたら、その人はそのとき、もうべつのことでおどろいていたか、おどろくということがどういうことか知らない人にちがいない。

 この妙に律儀で理屈っぽいはじまり方が、いかにもヨコジュンという感じがします。主人公の坂本浩一郎くんは孫悟空に極楽まで連れて行かれます。そして神様の世界の野球リーグで伝説となっている、不動明王の「血ぞめのボール」盗難事件の捜査をお釈迦様から依頼されます。
 坂本くんはお釈迦様が「マイケル」というニックネームで呼ばれていることを疑問に思います。その理由がなんと「マイケル・釈尊」というしょーもないだじゃれ。お釈迦様が大のだじゃれ好きなので、神様の世界ではだじゃれが大流行していました。そういうわけで坂本くんが極楽に言ってからは、機関銃のごとくだじゃれが繰り出されます。
 しかし、この作品の見所はだじゃれだけではありません。ミステリとしてもなかなかしっかりしています。坂本くんはボールの盗まれた博物館の近くで木がくさっていたという手がかりと、大きな鳥のようなものを見たという目撃証言から見事に犯人を突き止めます。そして犯行動機もこういうおとぎ話的な世界設定をうまく利用したもので、ばかばかしいながらも驚かされました