「びっくり館の殺人」(綾辻行人)

びっくり館の殺人 (ミステリーランド)

びっくり館の殺人 (ミステリーランド)

 ミステリーランド館シリーズ最新作というふれこみなのですが、ミステリというより怪奇小説として楽しんだほうがいいかも。
 主人公の三知也は近所の怪しいお屋敷「びっくり館」に住む子供、トシオと仲良くなり、「びっくり館」に足を踏み入れることになります。「びっくり館」の住人はトシオと老主人、そして人形のリリカ。館にまつわるあやしげな噂。設計する館の全てで怪事件が起こるという建築家中村青司の伝説。クリスマスツリーの枝に串刺しにされたトカゲとカナヘビ。館で行われる背徳的な人形遊戯。おどろおどろしいアイテムが雰囲気を盛り上げ、恐ろしいクライマックスへ導いていきます。
 なんといってもこの作品のおもしろさは、よそさまの家庭をうかがうのぞき趣味にあります。家族はカルトの最小単位、狂気の温床です。それもいわくありげなお屋敷なのですから、いやがおうにも興味がそそられます。本作はそういう悪趣味の産物なので、ラストの主人公の推測がほとんど妄想じみたものであることもうなずけます。そんなわけでこの作品はあくまでホラーなのだということにしておきましょう。本格ミステリを期待していたので正直がっかりなのですが。