「カリン島見聞記」(ますむらひろし)

カリン島見聞記〈上〉

カリン島見聞記〈上〉

カリン島見聞記〈下〉

カリン島見聞記〈下〉

 ペンギンの住む島カリン島の風物を紹介する話。
 なぜか乗客が全財産がつきるまで降りることのない鉄道。火山の火口にむかって呪文を唱える危険きわまりない新興宗教「カリン岳火山教」。カリン島は珍しいものでいっぱいです。
 各話ともオチがあるのかないのかはっきりしないまま唐突に終わってしまうので、まるで悪夢を見ているような不条理感が味わえます。ハンコを買いに行ったら自分の手のひらの骨がつきだしてきてハンコになって、「あんちゃんが生きてる間は、朱肉はいらないよ。あんちゃんの血が、先からにじみ出るからね」とペンギンのハンコ屋に涼しげな顔で言われる。この「ハンコ屋」という話なんかはグロさとシュールさが突出していて面白かったです。
 あとがきなどを見ると作者は宮沢賢治の影響を多大に受けているようですが、彼の個性的でシュールな世界は宮沢賢治と比べても遜色ないと思います。