「ももいろ荘の福子さん② おとうさん大キライの巻」(村上しいこ)

 母親を亡くし父親がアフリカで仕事をしているために、小学四年生ながらひとりでももいろ荘の管理人をこなす福子さんのお話第2巻。
 去年三作の本を出しブレイクした村上しいこですが、その力量にはもはや風格すら感じられます。関西ギャグのセンスと人情話を構築する技術はすでに完成されています。「福子さん」シリーズはポプラ社の柱になれるかもしれません。
 さて、2巻のタイトルですが、「おとうさん大キライ」だそうです。そりゃ小4の娘をほっといて外国に行くような父親は嫌われて当然です。
 お父さんが珍しく家に帰ってきたのですが、仕事が忙しくて全然福子さんにかまってくれません。福子さんは一生懸命気を引こうとするのですが、こんな感じです。

「おとうさん。ばんごはん、なにか食べたいものある?」
「ん?」
「ハンバーグはどうやろ」
「なんでもいいって」
「そんな料理はありません。」
「そやから、福子が作るものなら、なんでもいいねん」
(中略)
「あのな、おとうさん。わたし、しんけんにきいてるねんで。そんな答えかたないやろ。しんけんに答えてよ」
「なんやねん福子。なにおこってんねん」

 父と娘の会話には思えませんね。これは緊張感のなくなってきた新婚さんの会話です。頭に来た福子さんは、ぽんたの口車に乗せられて、お父さんの愛情を試すためにお父さんの大事な書類を隠してしまいます。
 この巻で一番輝いていたのはなんといってもぶっちゃん先生です。このキャラは空気が読めなくて、話が盛り上がった時にボケる危険な存在です。最後の最後、読者を泣かせる場面でもボケをかますのですから困ったものです。あの感動させるべきラストにギャグを織り込んだのは大冒険だと思います。それこそ、「さいごの五行がなければ、もっとよかったでしょう。」と言われかねない危険な賭けでした。しかしこれが全然感動を損ねていないんですね。それどころかむしろ余韻を増幅させています。これは作者の力量としか言いようがありません。