「紅玉」(後藤竜二・高田三郎)

紅玉

紅玉

 高田三郎後藤竜二による兄弟合作絵本。彼らの父親が今でも語り続けている話だそうです。
 1945年秋、北海道美唄市の話。戦争から帰ったばかりの父のりんご畑には、見事なりんごがなっていました。しかしりんご園が群衆に襲われてしまいます。群衆の正体は強制連行され、美唄の炭坑で働かされていた朝鮮人や中国人達でした。彼らが炭坑でどんな目にあわされてきたか、そして大陸で日本軍が何をしたかを知っている人々は、見ないふりをすることしかできませんでした。しかし父は、ただひとり彼らの方に歩み寄っていきました。
 わかりやすいストーリー、美しい絵でシンプルに語られるからこそ胸に迫ってきます。彼らは加害者側にいる父にもっともダメージをあたえるやりかたで去っていきました。戦後生まれのわたしでも、父の慟哭に共鳴してしまいます。
 本作は今年の青少年読書感想コンクールの課題図書ですが、ここは子供達がこの本をどう受け止めるか真摯に見てみたいと思います。