「雪の色が白いのは」(シャハト・ベルント編)

雪の色が白いのは―グリムにはないドイツのむかし話

雪の色が白いのは―グリムにはないドイツのむかし話

 「グリムにはないドイツのむかし話」と副題がついています。主に北ドイツの昔話を集めたものだそうです。前書きに「どちらかというと大人向け」と断りがついています。たしかに怪奇趣味が強すぎるものや下ネタに走っているのがあり、おおっぴらには子供に見せられない本になっています。しかしそもそも昔話は子供のために語られたものではないわけで、むしろそういうのこそ世間話としての昔話のあるべき姿だとも思います。
 表題作はタイトルどおり、雪の白さの起源を語るお話です。その昔雪には色がありませんでした。そこでいろんな花に色をくれるように頼みますが、断られ続け……というお話。このあたりはまだ毒がなくていいです。
 怪奇趣味に走っているのは「わら束とうさん」。わらでできた亭主が3人兄弟に騙され、しかえしに3人兄弟を騙し返すというもの。わら束とうさんは最初はころっと騙されたのに、そのごあざやかな手口で兄弟をはめていきます。キャラがよくわかりません。オオカミを羊だと言って売りつけ兄弟の牧場の羊を皆殺しにし、次は駄馬をお金を生む馬だと言って売りつけ、最後は女房を殺しても生き返らせる事のできる笛とやらを売りつけます。ラストは夢に見そうなくらい怖いです。
 「男の家事」もひどい話でした。妻のいないあいだに家事をこなそうとして男は失敗を繰り返し、ブタを殺しガチョウを殺し、しまいには子供まで殺してしまいます。不器用にもほどがあります。しかしなぜか女房は男を許します。ところが最後の1つの失敗だけは許しませんでした。激下ネタ。これは子供には見せられない話です。男にはそれしか期待されてないんだ。