- 作者: 斉藤洋
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2006/03/28
- メディア: 単行本
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第2話の「夏の宝物」はこんな具合に始まります。
このごろでは夏になると、ペットショップどころか、スーパーマーケットでもカブトムシを売っている。ほとんどが人工的に養殖したもので、とてもやすく手にはいる。
なんだなんだ。こういう言説はもう何十年も前から言われているぞ、老人の繰り言が始まったかと身構えてしまいますが、こう続きます。
それで、昔はどうだったかというと、昔は、買わなくても、カブトムシはそのへんの林にうようよいた、ということはなく、養殖がなかったぶん、カブトムシの数は少なかった。だから、カブトムシは今よりもずっと宝物だったのだ。
うまいはぐらかし。さすが斉藤洋は並みのオヤジとはひと味違います。
動物をネタにした嘘とも本当ともつかない大嘘話です。しかし嘘は嘘でも一筋縄ではいきません。第3話の「アラビアハツカネズミ」は、「わたし」の友達が祭りの夜店で子供にとっては大金を出して金色のネズミを買うお話。夜店という時点でものすごく怪しいのですが、実は友達は怪しいのを承知の上で買っていました。嘘というものの奥深さを感じさせられる作品です。
ホラ話としてとばしていたのが、ワンダーランド北海道を舞台にした第6話「ブレーメンの音楽隊」でした。北海道では信号待ちをしている間に車が雪に埋もれてしまうとか、雪のせいで車では不便なので、北海道民はロバにのって移動しているとか、もう言いたい放題です。