「バスラの図書館員」(ジャネット・ウィンター絵と文 長田弘訳)

バスラの図書館員―イラクで本当にあった話

バスラの図書館員―イラクで本当にあった話

 もし戦争の中で英雄と呼ばれるような存在が出現するとすれば、それは人をたくさん殺した人ではなくて、守るべきものを守った人だと思います。その意味でこの絵本に登場する図書館員、アリア・ムハンマド・バクルさんは英雄です。
 イラクの都市バスラで起こった実話を元にした絵本です。バスラ中央図書館の図書館員アリアさんは戦火の中隣人の助けを借りて本を安全な場所に移しました。蔵書の70パーセントに当たる三万冊の本を救出したそうです。図書館はその9日後に爆撃によって焼失しました。
 自由を標榜する国が図書館を爆撃し、本を焼き払ったという事実には怒りを禁じ得ません。本を焼く国家に大義などあろうはずがありません。本を守ったアリアさんの勇気とアメリカの蛮行はともに忘れないようにしたいと思います。